侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛

痛みは、その原因に基づいて侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に分類できます。侵害受容性疼痛は、熱刺激、機械刺激、化学刺激などが侵害受容器を刺激することによって発生する痛みです。なお機械刺激は圧力によるものであり、化学刺激はブラジキニン、セロトニン、ヒスタミン、プロトン、プロスタグランジンなどの化学物質によるものです。

一方で、神経障害性疼痛は侵害受容器を介さない痛みであり、痛みを伝える神経が損傷されることによって引き起こされます。侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛は時に混在することもあり、イメージとしては以下の図のようになります。

 

 

痛みの種類

出典:疼痛.jp

体性痛と内臓痛

体性痛は皮膚や骨、関節、筋肉などの部位が痛みです。痛みの場所がはっきりしている持続痛があり、歩行、立位など体動により増悪するのが特徴です。手術後の傷の痛みや骨転移による限定的な鋭い痛みのほとんどは体性痛に分類されます。壁側腹膜は体性神経に支配されており腹膜播種や腹膜炎では体性痛が起こります。

内臓痛は管腔臓器(食道、胃、小腸、大腸など)や固形臓器(肝臓、腎臓など)の伸展や攣縮などによって生じる痛みです。排尿、排便、嚥下時に増強する場合は内臓痛であることが多く、また痛みの場所がはっきりせず、この辺り全体的に深く締め付けられるような痛みが特徴です。加えて、悪心・嘔吐、発汗などの随伴症状が見られることもあります。わかりやすいイメージとしては月経痛は内臓痛に分類されます。他には消化管閉塞に伴う腹痛、肝臓腫瘍内出血やすい臓がんに伴う上腹部痛、背部痛などがあります。

体性痛と内臓痛の違いをイメージで説明すると、タンスの角に小指をぶつけた瞬間に感じる痛みが体性痛であり、5秒ほど経過してから、ぶつけた部位の周囲がジワジワと痛み出すのが内臓痛のイメージになります。

関連痛は内臓痛を生じた部位に隣接する知覚神経への刺激によって生じる痛みであり、病巣の周囲や病巣から離れた場所に発生する痛みです。例えば、上腹部内臓がんで背中が痛くなることや骨盤内の腫瘍により腰痛や会陰部の痛みが出ることがあります。

神経障害性疼痛

痛覚を伝える神経の直接的な損傷やこれらの神経の疾患に起因する痛みであり、灼けるような持続痛、槍で月抜かれるような伝激痛が混じることが多いのが特徴です。また痛み刺激を通常より強く感じる痛覚過敏や通常では痛みを起こさない刺激によって引き起こされる痛み(アロディニア)も神経障害性疼痛の特徴になります。

脊髄圧迫症候群

腫瘍の脊椎転移や浸潤により脊髄が圧迫され、痛みが生じる場合を脊髄圧迫症候群と呼びます。通常、腰背部の痛みが先行し、足の脱力感や痺れ、尿の出がくい、尿もれしやすいなど症状に発展していきます。

脊髄圧迫症候群はオンコロジーエマージェンシーであり、対応が遅れると回復が難しいことがあります。麻痺が始まってから48時間以内に治療を行うことにより回復が期待できるため、早期治療が不可欠です。「足が全く動かなくなった」といった場合は手遅れになるケースがあるため、腰背部痛や足の痺れや脱力感がある段階で連絡するよう患者に伝えることが重要です。

頸部痛や背部痛が発生した場合は、CTやレントゲンで骨転移を確認し、脊髄圧迫症候群を疑った場合は全身MRIが必要です。治療の選択肢にはステロイド漸減、手術、放射線があります。

腕神経叢浸潤症候群

腕神経叢に腫瘍が浸潤することにより、痺れなどの神経症状を引き起こす状態を「腕神経叢浸潤症候群」と呼びます。この症状は主に肺がんや乳がんなどに見られ、肘、前腕、薬指や小指に疼痛が生じることがよくあり、その後には痺れや筋力低下が進行することが一般的です。腕神経叢浸潤症候群の治療には、神経障害性疼痛と同様のアプローチが取られます。

腰仙部神経叢浸潤症候群

骨盤内腫瘍が腰神経叢や仙骨神経叢に浸潤することによって、両下肢の筋力低下、痛みが生じ、体動困難となることが多く、大腸がんや婦人科がんで多い症状です。治療には、神経障害性疼痛と同様のアプローチが取られます。

治療薬

体性痛NSAIDやオピオイドが有効であり、体動時痛ではレスキュー薬の使用が行われます。また骨転移に対するビスホスホネート、デノスマブや筋攣縮に対する筋弛緩作用のある薬剤などが使用されます。アセトアミノフェンには抗炎症作用が小さいため、特に炎症が強い骨転移、皮膚転移、がんの軟部組織浸潤などの症例ではNSAIDが有効と言われています。

内臓痛は非オピオイド、オピオイド共に聴きやすいとされています。

神経障害性疼痛は非オピオイド・オピオイドの効果が乏しいことがあるため、鎮痛補助薬の併用を考慮します。

参考