トラスツズマブ・エムタンシン(カドサイラ)の作用機序・副作用

トラスツズマブ・エムタンシン(商品名:カドサイラ)はHER2陽性の乳がんに使用されます。HER2を標的とするトラスツズマブに殺細胞性抗がん剤であるエムタンシンが結合した医薬品です。

カドサイラの効果効能

  • HER2陽性の手術不能又は再発乳癌

  • HER2陽性の乳癌における術後薬物療法

カドサイラの作用機序

HER2(ヒト上皮成長因子受容体2型)は、細胞表面に存在する受容体であり、活性化されるとがん細胞の増殖が促進されます。トラスツズマブがHER2に結合することでがん細胞の増殖シグナルが抑制されます。

同時に、トラスツズマブはNK細胞や単球などの免疫細胞に目印となり、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)を介してがん細胞が攻撃されます。

さらに、トラスツズマブに結合したエムタンシン(DM1)は微小管重合阻害薬であり、細胞分裂を阻害します。これは、ビンクリスチンやビンブラスチンと同様の作用機序を持ちます。トラスツズマブによってがん細胞に運ばれ、細胞内に取り込まれた後に、エムタンシンが離れて作用を発揮します。

カドサイラの副作用

トラスツズマブと殺細胞性抗がん剤を別々に投与すると、殺細胞性抗がん剤は正常細胞にもダメージを与えます。しかし、トラスツズマブに殺細胞性抗がん剤であるエムタンシンを結合させることで、エムタンシンをがん細胞に絞って作用させることができます。そのため、エムタンシンによる副作用が軽度だとされています。

末梢神経障害

手足の指が痺れたり、感覚が鈍くなったりすることがあります。これは微小管重合阻害薬に特徴的な副作用であり、エムタンシンによる副作用になります。微小管は神経細胞の軸索にも存在しているため、末梢神経障害が起こるとされています。

細胞体は障害されないため、原因薬剤を中止することで回復が見込めるのが特徴になります。ただし治療を長く続けると少しずつ悪化する傾向があり、蓄積性の副作用であるとされます。

血小板減少

カドサイラでは血小板減少(28%)が現れることがあります。トラスツズマブと比べると血小板減少のリスクは大きくなります。血小板数はカドサイラ投与後8日目に最も低くなることが知られています。そこから血小板数が回復し、投与日に最大となります。

そのため投与直前や初回投与後8日目に血小板数を検査し、低値を示す場合は休薬や減量が必要になります。添付文書では「血小板減少症による休薬および減量基準」が定められています。ただ症状として現れにくいため、定期的な血液検査を行うことでモニタリングを行います。

肝障害

添付文書のデータでは28.2%で肝機能障害の報告があります。重度の肝障害に発展する恐れがあるため、AST、ALT、ビリルビンを参考にして早期発見に努めます。数値上昇は比較的多く、AST増加(23.2%)、ALT増加(18.5%)、血中ビリルビン増加(5.1%)と報告されています。

添付文書には肝機能データによって休薬や中止の基準が設定されています。例えばASTやALTは基準上限値の3倍を超えると休薬、総ビリルビンは基準上限値を超えると休薬になります。

トラスツズマブと同様の副作用