オピオイドの使用方法を勉強する際には、学習する内容が膨大であるため、優先順位を考える必要があります。効率的に学習するためには、まずオピオイドの導入方法や注意点から学ぶのが良いでしょう。オピオイド導入は重要度が高く、遭遇する頻度も多いためです。

オピオイド導入後は、症状に応じて微調整を行えば良いのですが、導入時に間違えると修正が非常に困難です。そのため、導入時の学習は非常に重要だと言えます。

最初のアセスメント

オピオイドを導入するとき、必ず考慮するポイントをまとめておきます。焦らず落ち着いて確認するようにしましょう。

疼痛アセスメント

最適な鎮痛薬選択のために痛みの状況を確認します。例えば「痛み」といっても持続痛、突出痛、神経障害性疼痛など種類が多く、強度も異なります。

痛みの部位・範囲・性状

痛みの原因を考える上で最も重要な情報源になるのが、「痛みの部位・範囲」になります。局在する痛みであれば体性痛、局在が不明瞭な場合は内臓痛と推察することができます。

このとき関連痛にも注意が必要です。デルマトームに一致する痛みであれば神経障害性疼痛を考えることもできます。上腹部内臓のがんでは肩や背中が痛くなる、腎・尿路の異常では鼠蹊部が痛くなる、骨盤内腫瘍では腰痛が現れることがあります。

また体性痛では「ズキズキ」「鋭い痛み」、内臓痛では「鈍い」「押されるような」「重い」といった表現をされることがあります。神経障害性疼痛では「ビリビリ」「ジンジン」という特徴があります。

痛みの強さ

NRSやVASを用いて疼痛強度を評価します。また現在の痛み、一番強い痛み、弱い痛み、安静時の痛み、体動時痛の痛みに分けて評価すると良いです。

場所 体動時 安静時
腰部 7/10 5/10
痛みのパターン

痛みは1日のうち12時間以上続く持続痛と、持続痛が良好にコントロールされている場合の一過性の痛みの増強である突出痛があります。

疼痛アセスメントをまとめる

上記の情報を洗い出せたら、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に分けて整理するとわかりやすいです。侵害受容性疼痛では「〇〇による」に続いて「持続痛、体動時痛、関連痛」安静時痛区別

侵害受容性疼痛

場所・性状 原因 体性/内臓/関連 安静/体動 持続/突出
右頸部 第3頚椎骨転移 体性痛 安静時NRS2 持続痛
右頸部(体動時痛悪化) 第3頚椎骨転移 体性痛 体動時NRS8 突出痛

副作用アセスメント

便秘

オピオイドを投与すると多くの患者に便秘(OIC)が発生します。そのため、投与前の状況を記録しておくことでオピオイドによる影響を抽出しやすくなります。このとき、1日の排便回数やブリストルスケールを活用した便の性状を確認しておくと良いです。

 

内服できるかを確認

WHO方式がん疼痛治療法では「がん疼痛5原則」が提唱されていましたが、2018年にガイドラインが改定され、以下のように4原則となりました。

  1. 経口的に
  2. 時刻を決めて規則正しく
  3. 患者ごとの個別な量で
  4. その上で細かい配慮を

がん疼痛では用量調節が容易で、安定した血中濃度が得られる経口投与が望ましいとされます。そのため、まずは経口投与できるかどうかの確認が必須になります。経口投与できる場合は内服薬を使用し、経口投与できない場合は注射、貼付薬、坐薬から選択します。

オピオイドの種類

一般的なオピオイドとしてモルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、ヒドロモルフォンがあります。これらは鎮痛効果に大きな差はありませんが、それぞれの特性が異なります。その特性と患者症状が合致するような選択が望ましいです。

例えば、フェンタニルは便秘の副作用が少ないとされるため、強い便秘や腸閉塞になりやすい状態(サブイレウス)ではフェンタニルから導入することも選択肢になります。またモルヒネは呼吸困難に対する効果が示されているため、モルヒネでの導入も考慮できます。ただし、他のオピオイドでも効果を認めるとする報告があるため、モルヒネ以外でも問題ありません。

上記のような特性に当てはまらない場合がほとんどだと思いますが、そうした場合はオキシコンチンやヒドロモルフォンでの導入が簡便な方法になります。

ベース・レスキューの組み合わせ

通常がん疼痛は持続的であり、鎮痛薬の血中濃度が低下すると痛みが再燃する。そのため痛みが出てから鎮痛薬を投与する頓用方式は行うべきではありません。ベースとレスキューのオピオイドは同一成分とすることが基本ですが、そうならない場合もあります。

オピオイドの用量

ここまでで「疼痛状況」「経口投与できるか」「オピオイドの種類」「ベース・レスキュー」を決めることができました。続いて、オピオイドの投与量を考えます。なおこれまでにオピオイドを使用したことがない「オピオイドナイーブ」を想定しています。

ヒドロモルフォン(ナルサス+ナルラピド)

ヒドロモルフォンでは徐放性のナルサスと速放性のナルラピドを使用します。ナルサスの添付文書ではオピオイド鎮痛薬を使用していない患者に使用する場合、1日4mgから開始するよう記載されています。ただしナルサス錠は「2mg, 6mg, 12mg, 24mg」の規格しか存在しません。そこで2mgを2錠服用して対応します。なお適宜増減の記載があるため2mgから開始しても問題ありません。これをモルヒネに換算すると20mgになります。

またナルラピドの1回量はヒドロモルフォンの1日あたり定時投与量に対して1/6〜1/4と添付文書に記載があります。つまり0.66mg〜1mgを投与することになります。ただしナルラピドは「1mg, 2mg, 4mg」規格しか存在しません。そこで1/4を採用し、レスキューは1mgとします。ちなみに、ナルラピドには適宜増減の記載がありませんが現場ではナルサス2mg+レスキュー1mgもあります。これをモルヒネに換算すると5mgになります。

処方例
  1. ナルサス錠2mg_1回2錠_分1_24時間毎
  2. ナルラピド錠1mg_1回1錠_疼痛時
処方例2
  1. ナルサス錠2mg_1回1錠_分1_24時間毎
  2. ナルラピド錠1mg_1回1錠_疼痛時

オキシコドン(オキシコンチン+オキノーム)

オキシコドンでは徐放性のオキシコンチンTR錠(オキシコドン徐放錠NX「第一三共」)と速放性のオキシコドンNX錠、オキノーム散、オキシコドン内服液を使用します。オキシコンチンTRの添付文書では疼痛の程度に応じて10〜20mgを1日投与量とすることが望ましいと記載されています。モルヒネ換算では15mg〜30mgになります。

またオキシコドン錠の定時投与中のオキシコドンの1日量の1/8〜1/4を投与することと記載があります。つまり以下のようなパターンになります。

10mg(モルヒネ換算15mg) 20mg(モルヒネ換算30mg)
1/8換算 1.25mg(規格なし) 2.5mg
1/4換算 2.5mg 5mg

しかしオキシコドンNX錠、オキノーム散、オキシコドン内服液について、最小規格はいずれも2.5mgとなります。そのため、実践的には上記青文字の用量を採用することになります。

処方例
  1. オキシコドン徐放錠NX5mg「第一三共」_1回1錠_分2_12時間毎
  2. オキシコドン錠2.5mgNX「第一三共」_1回1錠_疼痛時

モルヒネ

モルヒネでは徐放性のMSコンチン(モルヒネ硫酸塩)と速放性のオプソ内服液(モルヒネ塩酸塩)を使用します。MSコンチンの添付文書で1日20~120mgを2回に分割経口投与すること、また初回量は10mgとすることが望ましいと記載があります。

オプソ内用液の添付文書では臨時追加投与(レスキュー・ドーズ)として使用する場合、定時投与中のモルヒネ経口製剤の1/6量を目安に投与することと記載があります。定時投与が1日20mgとすると約3.3mgとなるためオプソ内服液は5mgを採用すればよいです。

処方例
  1. MSコンチン錠10mg_1回1錠_分2_12時間毎
  2. オプソ内服液5mg_1回1包_疼痛時

フェンタニル

フェンタニルでは徐放性のフェントステープ(デュロテップパッチ)と速放性のイーフェンバッカル錠やアブストラル舌下錠があります。フェントステープの添付文書ではオピオイド鎮痛薬を使用していないがん患者に使用する場合は0.5mgから開始するよう記載があります。これをモルヒネ換算すると15mgになります。なお定常状態に至るまで時間がかかることから、フェントステープ貼付後少なくとも2日間は増量を行わないよう記載があります。

ここで注意事項として、イーフェンバッカル錠やアブストラル舌下錠は「強オピオイドが低用量(モルヒネ60mg以下)で使用されている場合、使用経験は限られるため必要性を十分に検討」と記載があります。つまり、フェントステープ0.5mgから開始する場合に慎重な判断が必要になります。

そこでフェンタニル0.5mgから開始する場合はレスキュー薬として他の種類のオピオイドを使用することが多いです。なおフェントステープが定常状態に至るまで時間を要することから、レスキュー薬を多めに処方することも考えます。

処方例
  1. フェンタニルテープ0.5mg_1日1枚貼付_24時間毎
  2. ナルラピド錠1mg_1回1錠_疼痛時(多めに処方)