オピオイドやベンゾジアゼピン系睡眠薬の副作用にせん妄があります。せん妄の症状は人それぞれであるため、判別が難しく、対処が遅れることがあります。そうなると患者本人だけでなく、家族や施設スタッフの負担が大きくなります。

そのため、せん妄リスクを事前に評価し、早期対処が必要となります。そこでせん妄のリスク要因や治療法、予防法について説明していきます。

せん妄の症状

せん妄では見当識障害、記憶障害、注意障害、幻覚や幻視、妄想、不安、焦燥感、睡眠覚醒リズムの異常などの症状が起こります。症状の発言は急性~亜急性、つまり急に始まることが多く、症状が良くなったり悪くなったりします。

見当識障害は時間や場所が分からなくなる状態を意味します。例えば、季節感のない服を着たり、自宅のトイレの場所が分からなくなったりすることです。

記憶障害については認知症との違いを理解しておく必要があります。せん妄による記憶障害は急に始まり、時間経過とともに良くなったり悪くなったりします。一方で認知症の場合は症状が徐々に始まり、改善せず進行していくのが特徴です。

幻覚は実際に存在しないものを見たり聞いたり感じたりする症状です。要するに厳格には幻視や幻聴が含まれます。せん妄の場合は幻視が多くみられることが知られています。

注意障害はせん妄患者のほぼ全員で見られる症状です。ボーッとして注意力が落ちます。また睡眠覚醒リズムの障害についてもせん妄患者の97%で起こるとされています。

せん妄では上記のような症状が現れますが、易怒的、興奮、多動を伴う症状が目立つ場合を過活動型せん妄と言います。一方で、傾眠や昏迷に近い症状が目立つ場合を低活動型せん妄と言います。またこれらが混在している場合を混合型せん妄と言います。

せん妄アセスメントツール

  • CAM(Confusion Assesmento Method)
  • DST
  • SQiD

せん妄かどうかをスクリーニングするとき、「認知症」「うつ病」との鑑別が重要になります。このとき「注意障害はせん妄患者のほぼ全員で見られる症状」であることを意識するとよいです。低活動型せん妄は見落とされやすいですが、注意障害の有無に着目することで早期発見が可能になります。

なお上記のツールはせん妄の可能性を察知するためのものであり、重症度を評価するツールではないことに注意が必要になります。

せん妄の3要因

せん妄は準備因子、促進因子、直接因子の3つの要因が関連し、発症閾値を超えることにより発症すると考えらています。

準備因子は高齢、脳血管障害、認知症など脳機能低下が生じやすい状態が該当します。準備因子は除去することは困難ですが、予防や早期発見のために役立ちます。

たとえば過去に脳梗塞を起こしたことのある認知症の高齢者であればせん妄を起こしやすい体質であるため家族や施設スタッフに対して、せん妄の症状を説明しておくことで早期発見につながります。さらにせん妄リスクの高い薬剤を避けることにもつながります。

促進因子はせん妄を発症しやすい状況に近づけたり、せん妄発症後の難治化にかかわる因子であり、ストレス、身体拘束による不動化、不眠などがあります。

直接因子はせん妄の引き金となる要因であり、代表例として薬剤の副作用があります。オピオイド鎮痛薬、ベンゾジアゼピン系、ステロイド、抗ヒスタミンなどが代表例です。あるいは電解質異常や脱水、感染症なども直接因子となりえます。

がん患者のせん妄

骨転移によっておこる高カルシウム血症や脳転移、免疫チェックポイント阻害薬も直接因子となります。その他にも、全身状態不良、低アルブミン血症、低酸素脳症なども該当します。

治療

せん妄症状が始まった時期と直接因子に関連があるかを調べます。例えば、オピオイド増量後にせん妄症状が現れた場合はオピオイドが直接因子である可能性が高くなります。

準備因子や促進因子は発見しても対策が難しいため、まずは直接因子を探すことが効率的です。直接因子が分かればそれを除去する方法を考えます。オピオイドの増量が直接因子であれば、オピオイドの減量や中止、あるいは他剤へのスイッチングを検討することになります。

なお低活動型のせん妄は薬物治療は行わないことが推奨されています。

抗精神病薬が第一選択

せん妄治療の第一選択は抗精神病薬です。このうち、ハロペリドール、リスペリドン、クエチアピン、ペロスピロンは適用外使用が認められています(国民健康保険中央会)。

ただしハロペリドールは定型抗精神病薬であり、錐体外路症状のリスクが高いため、非定型抗精神病薬が使用されやすいです。しかしハロペリドールは注射薬として使用できるメリットがあります。

クエチアピンは糖尿病患者に禁忌になります。そのため、糖尿病でなければリスペリドン、糖尿病であればリスペリドンという判断基準になります。またハロペリドールはパーキンソン病患者に禁忌であることも注意が必要になります。

またペロスピロンは水に溶けにくいため、空腹時投与で吸収量が低下することがあります。そのため食後に服用するよう指導が必要になります(インタビューフォーム)。

チアプリド

チアプリドにはせん妄の適応があります。しかし実臨床では効果や副作用などを考慮して抗精神病薬が第一選択薬になっています。

抗精神病薬とベンゾジアゼピン系の併用

リスペリドンやハロペリドールはクエチアピンに比べると鎮静作用が弱いため、十分な鎮静が得られないことがあります。鎮静を得るために抗精神病薬を増量すると薬剤性パーキンソニズムなどの副作用が懸念されるため、ベンゾジアゼピン系を併用することもあります。ただしベンゾジアゼピン系は直接因子であるため、単独投与は避けた方が良いです。

ブロナンセリン貼付薬

内服が難しい場合の選択肢としてブロナンセリン貼付薬があります。

予防薬

ラメルテオンやスボレキサントはせん妄予防に効果があるとされます。準備因子が多いなど、せん妄ハイリスク患者で不眠がある場合に使用されることがあります。

またベンゾジアゼピン系は直接因子として作用するため、ラメルテオンやスボレキサントへ切り替えをすることも予防につながります。

なおせん妄の予防に抗精神病薬が有効であるかどうかは結論が出ていないため、抗精神病薬を予防薬として使用することは好ましくないとされています。

非薬物療法

非薬物療法は促進因子に対する介入がメンイになります。具体的には見当識を保てるように、カレンダーや時計を設置し、会話中に日付を確認するとよいとされます。

また、家族の写真や普段から使用している日用品をそばに置いておくことも患者の不安軽減に有効であるとされます。家族との面会や付き添いも効果があるとされます。