フッ化ピリミジン系薬剤の副作用

フルオロウラシルやティーエスワンなどのフッ化ピリミジン系薬剤は副作用発現率が高いため、継続性を高めるためには副作用管理が重要です。ここではフッ化ピリミジン系抗がん剤で起こりやすい副作用について解説します。

悪心・嘔吐

フルオロウラシルやテガフールの催吐性リスクは軽度リスク(10〜30%)のため、悪心・嘔吐に対する予防投与は行わないことが多いです。ただし例外的にFOLFOXIRI療法(FOLFOX+イリノテカン)では高度リスク(90%以上)となるため予防投与が行われます。

とはいえ、フルオロウラシル単独投与でも30%程度の症例で悪心・嘔吐の副作用は出現し、その発現時期は投与後4週間以内に確認される割合が多く、特に1週間目がもっとも多いです。したがって、投与後早期に確認される副作用という認識で問題ありません。

対処法としてはドンペリドンやメトクロプラミドなどの制吐剤投与が行われます。頓服として使用する場合は、発現したらすぐに服用することを説明し、症状が長引かないようにすることが必要になります。

また胃炎によって悪心・嘔吐が起こっている場合もあり、そうしたときはH2ブロッカーが有効な場合もあります。

下痢

フッ化ピリミジン系薬剤の下痢は、投与後1週間から1ヶ月程度でよく見られます。この下痢は、抗がん剤が消化管粘膜に直接影響を与えることが原因です。

また腎機能低下患者では、5-FU濃度が上昇し、下痢の頻度が増加する可能性があるため、腎機能の確認が必要です。

軽度な場合は収斂剤(タンニン酸アルブミン)、吸着剤(天然ケイ酸アルミニウム)、整腸剤などが使用されます。症状が高度な場合は、ロペラミドやリン酸コデイン酸が利用されます。

なおロペラミドの海外推奨投与量は1回4mgであるのに対し、国内では1~2mgになっていることに注意が必要です。

食事の工夫としては、温かくて消化の良いものを摂取し、刺激物や野菜、脂肪分の多いもの、乳製品は避けるようにします。また、脱水予防のためには十分な水分補給が必要です。

口内炎

口内炎の場合は投与開始2〜3週目での発現が多くなります。口内炎が続くと、食事摂取の低下や治療継続の意思低下などにつながるため油断してはいけません。

口内炎は口内環境を整えることで予防につながります。丁寧なブラッシングや定期的なうがい(アズレンスルホン酸Naなど)、水分摂取により口腔内の湿潤保持が重要です。

なお5-FUのインタビューフォームには口内炎の予防法として、口腔内を氷で冷やすクライオセラピーや、アロプリノールでのうがいについての記載があります。

出典:5-FU注インタビューフォーム

また半夏瀉心湯を白湯に溶かし、1日3回うがいをすることでも治療効果が示されています。予防効果はほとんどありませんが、口内炎の持続時間が短くなります。このとき、ガラガラ、ブクブクといったうがいではなく、口の中に数十秒ためてから吐き出すという方法がとられることが多いです。

さらに口腔内から出血している場合はトラネキサム酸でのうがいを実施することがあります。

味覚障害

フルオロウラシルの副作用として味覚障害があります。発現機序は不明ですが、5-FUによって亜鉛吸収が阻害されることが一因とされます。

なお金属キレートを作る薬剤も亜鉛の吸収阻害により味覚障害が発生することがあります。そのため、フルオロウラシル以外の併用薬についても原因の可能性があることに気をつけましょう。

ただ原因薬剤が見つかったとしても、休薬が難しいこともあります。そうしたときは亜鉛サプリの補給、ポラプレジンクの服用などにより亜鉛を補給します。

また口腔乾燥が原因であれば人工涙液を使用したり、麦門冬湯を服用することもあります。

食欲不振

悪心・嘔吐や味覚障害などに付随して食欲不振を起こすことも多いです。食欲不信は 投与開始後1〜2週目の発現が多いです。

食欲不信があるときは消化器症状が付随していないかを確認し、それに対する治療を行います。

また食べられそうなものを、いつでも食べられるよう用意し、消化がよく栄養価の高い食品を選ぶようにします。

色素沈着

顔面、爪、手、足などに色素沈着が発現することがあり、投与開始後3週目が発生率が最大になります。

紫外線により色素沈着が悪化することがあるので、日焼け止めクリームで対策することを勧めます。また事前の説明がないと、色素沈着に不安を抱き、自己判断で休薬する可能性もあるため、十分な説明が必要です。

爪の場合は色素沈着だけでなく変形、薄くなる、剥がれるなど、見た目の変化から痛みを伴うものまでさまざまな症状があります。

5FU系の薬では爪が黒ずむことが多く、タキサン系の薬では爪に筋が入って凸凹した状態になることが多いです。

抗がん剤の治療期間中は、爪や手の皮膚が乾燥しないように注意が必要です。手洗い後や入浴後には、クリームや爪用オイルをやさしくマッサージして塗り、保湿することがおすすめです。

発疹

投与開始後2週目に紅斑、丘疹、膨疹といった湿疹の発現が多くなります。症状が軽い場合は外用薬や抗アレルギー薬によって対処します。

手足症候群

手足症候群は、手のひらや足の裏など四肢末端部に現れ、発赤、腫脹、強い不快感、うずきなどの皮膚関連の有害事象を指します。

手足症候群はフッ化ピリミジン系とキナーゼ阻害剤によって引き起こされますが、それぞれの特徴が異なります。前者は広い範囲に症状が現れるのに対して、後者は限局的であり、角化傾向が強いです。

現在治療法は確立されていないため、予防が重要です。そのため可能であれば、毎回靴を脱いでもらい、確認するのが望ましいです。手足症候群による角化は物理的刺激に敏感なため、靴のサイズを適切に合わせるなど、刺激を避ける工夫が必要です。また、尿素やサリチル酸を含む外用薬での保湿が推奨されています。

そうした予防法を提案するためには患者の仕事や趣味、生活習慣を確認することが大切です。例えばゴルフ、登山などは手足に負担が大きいため対策が必要です。また暑いお風呂や長時間の入浴を避けることも予防方法の一つです。

手足症候群が見られた場合、減量や休薬が有効です。その基準としてGrade2の手足症候群を目安にすると良いです。Grade2に進行するとストロンゲストのステロイド外用剤でもGrade3に進行することを阻止するのが難しくなるからです。

流涙

フルオロウラシルでは流涙が起こることがあり、「見えにくい」「かすむ」といった症状につながります。これは抗がん剤や涙液に染み出し、角膜を障害するために起こります。

軽症の場合は、目の抗がん剤を洗い流すために防腐剤フリーのソフトサンティアなどが使用されます。防腐剤が含まれていると、角膜障害を悪化させる可能性があるためです。

ただし、ヒアルロン酸点眼を使用すると、その粘稠性により抗がん剤を含んだ涙液が滞留しやすくなり、症状を悪化させる可能性があるため、注意が必要です。ヒアルロン酸点眼の使用は勧められません