パフォーマンスレポートの種類

パフォーマンスステータスは、患者の全身的な機能や活動能力を表す指標であり様々な種類があります。Eastern Cooperative Oncology Group(米国東海岸がん臨床試験グループ)によって作られたECOG PSが広く使用されています。

ECOG PS

ECOGパフォーマンスステータスは、患者の全身的な機能や活動能力を表す指標であり、主にがん患者の評価に使用されます。以下に、JCOG(日本臨床研究グループ)によって日本語訳されたECOGパフォーマンスステータスの5段階分類を示します。

パフォーマンスステータス(PS) 状態
0 まったく問題なく活動できる。発症前と同じ日常生活が制限なく行える。
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。
2 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす。
3 限られた自分の身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4 まったく動けない。自分の身のまわりのことはまったくできない。完全にベッドか椅子で過ごす。

PS4の状態では、患者は完全に寝たきりで、自力での日常生活動作が不可能です。また、自立歩行が困難であり、移動する際には常に車椅子の使用が必要となります。

PS3の状態では自己介助ができず、自分での日常生活動作(食事、入浴、衣服の着脱など)が制限されています。しかし、ベッド以外での活動や移動は一部可能であり、杖などの支援具を利用して移動できることもあります。

なおWHOによるパフォーマンスステータスが使用されることもありますが、ECOGパフォーマンスステータス基準と同じと考えて問題ありません。

KPS PS

図1

ECOGパフォーマンスステータスとことなり、スコアが小さいほど全身的な機能が低下していることを示す。

パフォーマンスステータスは順序尺度

医療データを解析する際には、データの尺度を正しく理解し、それに基づいた適切な解釈を行うことが重要です。

比率尺度のデータ(例:握力、体重、血圧)は、数値の大小や比率に意味があります。例えば、握力が30kgの人は握力が10kgの人よりも3倍強いと言えます。これらのデータは算術的な演算が可能であり、比率や差を意味のある形で比較することができます。

一方、順序尺度のデータ(例:パフォーマンスステータス)は、数値自体には意味がありませんが、順序に意味があります。つまり、PS=5の方がPS=1よりも全身状態が悪いことを示します。しかし、PS=5がPS=1の5倍悪いわけではありません。順序尺度のデータでは、相対的な順序や階層関係を表現することができますが、数値の大小や差には意味がありません。

医療データの解析では、これらの尺度を適切に取り扱う必要があります。比率尺度のデータでは、平均値や割合などを計算することができますが、順序尺度のデータではそういった計算は適切ではありません。順序尺度のデータを解析する際には、順序の関係を考慮して、グループ間の比較や傾向の把握を行うことが一般的です。

PSによってがん治療や化学療法の方針を決定する

抗がん剤を用いて行うがん治療を化学療法と言いますが、化学療法を実施するかどうかはPS(パフォーマンスステータス)によって左右されます。

化学療法はがん細胞を攻撃する一方で、正常な細胞にも影響を及ぼすため、体力や免疫力が低下している場合には重篤な副作用が現れることがあるからです。

全身状態が悪い場合、化学療法による副作用に耐えられず、かえって予後が悪くなる可能性もあります。一般的にはPS3(日常の50%以上ベッドで過ごす)以上では化学療法は適応になりません。

しかしながら、PSは判断基準の一つであり、状況によってはPSが悪くても化学療法が実施される場合もあります。たとえば、分子標的薬は短時間で高い効果が期待できるため、PSが悪くても選択されることがあります。

PSは予後予測にも活用される

パフォーマンスステータス(PS)は予後予測にも活用されます。正確な予後予測が可能な場合、予後が短い患者に対してリスクの高い治療を避けるなど、適切な治療計画を立てることができます。

ただし、パフォーマンスステータスだけでは正確な予後予測は難しく、血液検査の結果や食欲不振の有無など複数の要因を考慮する必要があります。そこでPaPスコアを計算する方法があります。

PaPスコアは、月単位での予後を予測するために使用されます。なお、このスコアではKPS(Karnofsky Performance Scale)を用いてパフォーマンスステータスを評価します。

PaPスコアでは、特定の項目から合計点を算出します。その詳細な計算方法は表に示されています。

上記で計算された結果が大きいほど、予後が悪い結果となります。具体的には以下のような基準で考えられることが多いです。

この他にも、短期的な予後を予測するPPI(Palliative Prognostic Index)、さらに詳細なPiPSモデル(Prognosis in Palliative care Study predictor models)など、様々な予後予測ツールが開発されています。[blogcard url=”https://www.seirei.or.jp/mikatahara/doc_kanwa/contents7/71.html”]

不可逆的(不応性)悪液質

がん悪液質は、がん細胞から放出されるサイトカインによって引き起こされる症状であり、食欲低下、タンパク質分解、インスリン抵抗性などが特徴です。

悪液質は段階的に進行し、最終的には不可逆的な栄養障害を引き起こします。そのため、前悪液質(pre-cachexia)の段階から早期介入が必要であるとされています。

詳細は画像後のキャプションに記載しております

パフォーマンスステータスはがん悪液質の状態を確認するときにも使用されます。

悪液質症状に加え、抗がん剤による治療抵抗性やパフォーマンスステータス(PS)が3以上であれば不応性悪液質 (refractory cachexia)だと判断ができます。この状態に至ると、予測される生存期間は一般的に3ヶ月未満とされています。

パフォーマンスステータス(PS)のゴロ、覚え方

最後に、パフォーマンスステータスの覚え方を紹介しておきます。覚えたての時期はPS0とPS4のどちらが重要だったか混乱しやすいです。そこで、以下のように考えると簡単です。

参考:ゴロゴロ医学

この覚え方を使うと、数字が大きくなるほど患者の状態が悪化していることがイメージしやすくなります。また、PS0とPS4のどちらが重要かを混同しにくくなります。

パフォーマンスステータスとADLの違い

ついでに、パフォーマンスステータスとADL(日常生活動作)の違いについても理解しておきましょう。

ADLは日常生活を送る上で最低限必要な動作を言い、食事、排泄、入浴、歯磨きなどがあります。

つまり、パフォーマンスステータス(PS)と比較して、より細かい視点で活動レベルを評価することができます。リハビリや認知症評価の現場で使用されることが多い評価方法になります。

具体的な計算方法としてはLawtonの尺度、Barthel indexなどがあります。例えば以下はLawtonの尺度の一例になります。

大きく異なるポイントとしてはADLは低いほど活動性が低下しますが、PSは大きいほど全身状態が悪いことを意味します。